複雑系のパターンを炙り出す

超短期の市場で生まれる利益は、どこへ消えていくのか。答えは単純ではありませんが、はっきり言えるのは——その多くがα(アルファ)と呼ばれる“わずかな歪み”から生まれ、そして高度な設備と人材を備えた海外クオンツや高速系のトレーディング企業に、採掘されるように吸い上げられている、という現実です。短期の超過収益は本質的にゼロサムに近く、国内の個人投資家にとっては取りづらい。結果として、超短期の利得が国外の大規模ファームに移転しやすい構造ができあがっています。断定的な数値を持ち出すより先に、まずはこの力学を「どう顕在化させるか」—それが私たちの研究の出発点でした。

α戦略とは何か——“市場平均の上乗せ分”を、どうやって拾うのか

投資の成績は大ざっぱに、市場全体の動き(ベータ)と、そこに上乗せされる超過収益(アルファ)に分解できます。日経平均に連動する投信がベータだとすれば、アルファは市場の平均では説明できない“わずかな規則性”をとらえて積み上げる収益です。
問題はその“わずか”が、秒から数分という極小の時間軸に現れ、持続が短いこと。だからこそ、観測(板・歩み値の統計化)→判断→約定を、遅延なく並列にこなせるクオンツやHFTが圧倒的に有利になります。彼らは取引所のコロケーション(同居設置)でマイクロ秒~十数マイクロ秒の遅延で発注し、FPGA/専用回路でミリ秒の前に意思決定を終え、ダイレクト・マーケット・アクセスでネットワークの「無駄」を最小化します。高速マイクロ波/レーザー回線はファイバーより速く、プロ向けの約定/板データ(直結フィード)は情報の鮮度で個人向け配信を上回る。さらに、約定手数料・リベート体系は機関が圧倒的に有利で、在庫(ポジション)を横断的にヘッジできる規模・バランスシートも持つ。要するに、速度・情報・コスト・在庫管理の四点セットで、一般投資家は桁違いの上限に阻まれます。

それでも、私たちは、この見えにくいアルファの正体を一般投資家にも直観的に理解できる言語に翻訳するため、可視化と検証の仕組みを研究しています。

ランダムな中の規則性——微小な自己相関と非対称性

超短期の値動きはカオス的に見えますが、自己相関(似た動きが続きやすい性質)や非対称性(上方向と下方向で出方が偏る性質)が、うっすらと埋まっています。クオンツのα戦略は、これらの微小な偏りを大量の試行で抽出し、統計的に再現しやすい条件へ落とし込む営みです。
私たちは、分・秒足や板の厚み、スプレッドの拡縮、連続プリント(約定の連打)などを特徴量化し、膨大な条件セットを機械的に生成→トーナメント方式で競わせ、生き残ったものだけを期待値で合成します。さらに、「効かない」ことの証明(反証)も同時に走らせ、たまたま当たった条件を削ぎ落とします。ここにあるのは、都合の良い物語ではなく、疑うところから始める科学的な態度です。

また、モデルの有効性を検証するだけでなく、「仮定したモデルが機能しない」ことを証明する視点も取り入れ、選択された分布関数やパラメータの適合性を厳格に検証するプロセスも実装しています。

このような手法は、1990年代の金融モデリングの黎明期に登場した「ブラックボックスモデリング」の発展系といえます。
※補足:「ブラックボックスモデリング」という言葉自体は今日やや陳腐化している面もありますが、本稿ではあえてその原義――因果構造を明示せずとも、予測の有効性を確率的・統計的に担保する手法――を尊重し、使用しています。

“構造”を読むPulse、“勢い”を測るMomentum

見えないものは、見える形に。私たちの分析で中核になるのは、Pulse(位相の構造)とMomentum(推進力)という二つの予測曲線です。どちらも、従来の移動平均や単純なモメンタムでは拾いきれない微小な歪みを、直観的に把握するための装置です。

Pulse:相場を「一周の位相」で並べ替えて“片寄り”を測る

時刻のままでは整列しないパターンも、**位相(フェーズ)**で並べ直すと見えやすくなります。短い区間を“1周のサイクル”になぞらえ、位相同期で再配置すると、次のような量が素直に読み取れます。

  • 滞在時間の偏り(基準価格より上と下に“どれだけ長くいたか”)
  • 面積の偏り(上側・下側の積み重ねの大きさ)
  • 累積変動の差(上げ方向と下げ方向の合計差)
  • トレンド線からの重心のズレ(上下どちらに重心が寄っているか)

ある短い区間をサイン波1周になぞらえ、時間ではなく位相で価格列を並べ替えると、どちら側に長く滞在したか、どちら側に面積(積分量)が多いか、トレンド線からの乖離の重心はどこかといった構造的バイアスが浮かび上がります。
私たちはこれをPulse Chartと呼び、内部で

  • 開始価格に対する滞在時間比(IMB)
  • 上下方向の累積変動量の差(HBR)
  • トレンド線からの乖離重心(PGR)
  • 価格の積分的偏在(FLEX)
    を測っています。「土台の片寄り」が見えると、反転の兆しや過剰な延長が読み取りやすくなる。HFTが先に嗅ぎ取る超短期αの発生源を、数値として理解できるようにする狙いです。

Momentum:どちらに、どれだけ押しているか/どこで息切れするか

もう一本はMomentum Chart。瞬間的な推進力のベクトルと、その天井(Ceiling)と床(Floor)を捉えます。いま押している方向と息切れの兆候を同時に測ることで、追うべき動きと避けるべき動きの見極めが精緻になります。
このMomentum読みに厚みを与えるため、私たちはベクターチャートを参考にした四つの補助指標も併用します。

  • Inertia Factor:同方向が続きやすい慣性
  • FLASH:イベントや材料の効き方が偏りやすい側を示唆
  • Box Index:レンジ収束の強さ
  • Reversal Momentum Index:逆向きの勢い立ち上がり

FLASHは指標やニュースの“効き方”の非対称、Box Indexはレンジへの収束、Reversal Momentum Indexは逆向きの勢いの立ち上がり、Inertia Factorは同方向の慣性(段上げ・段落ちの出やすさ)を示します。Phase(構造)×Momentum(力)という二軸で眺めれば、取りに行けるαと危ないαの境界線が鮮明になります。

「アルゴの音色」を聴く——AlgoTone

高度なアルゴリズムの中身は見えません。しかし、市場には痕跡が残ります。スプレッドの拡縮、最良気配の厚みの偏り、板の点滅(フリッカー)、連続プリントのテンポ——これらを定点観測し、行動様式ごとの“音色(トーン)”として分類したのがAlgoToneであり、それを顕在化したStellar Navigationシステムです。
たとえば、同方向の小口が等間隔で続きはしご状に進む挙動は、分割執行(Step)的なアルゴを示唆します。レンジ上下の“壁”が再提示されやすい局面はBox的。片側の板がごっそり消えて段飛びするのはShock的。これらは雰囲気の名前ではなく、自己相関・非対称性・位相同期といった統計的特徴量にひも付いており、PulseやMomentumと矛盾しないかを常時照合します。
目的は「見えない意思決定の一部を、見える材料に置き換える」ことです。そこでの関心は「なぜそう動いたのか」という説明的理解ではなく、「どのようにそう動いているのか」という現象そのものの編成、もしくは構造理解にあります。

市場の動きに何らかの「本質的意味」があるかどうかをあらかじめ想定するのではなく、意味づけ以前の次元において市場が示すリズムやパターンに耳を傾けること。市場を志向的対象として捉えるのではなく、むしろ市場それ自体が生起する構造、潜在する時間性、再帰性、自己相関的配置をさぐることが重要です。

2025年7月14日お知らせ

時間帯別投資戦略

2023年6月23日No.14 PM14:45 End Analysis (short terms)

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